甑島のトシドン

トシドンの伝承をもとにしたの年中行事。
大晦日の夜、地元の青年や年配の人が、鼻の長い鬼のような面、蓑や黒いマントなどでトシドンの姿に扮し、子供のいる家をまわる。子供たちが年内に仕出かした悪戯などを「いつも天から見ているんだぞ」とばかりに怖い声で指摘し、懲らしめる。事前に家族がトシドン役の人々に叱って欲しい内容を知らせているのだが、子供にしてみればなぜ知っているのかと恐怖におののき、反省を促されることになる。悪行について一通り懲らしめた後、勉強のことなど、最近の長所について褒めあげる。さらに歌を歌わせる、数を数えさせる、けんけん(片足跳び)をさせるなどの注文をし、子供はその言いなりとなる。これらの行事を終えた後、トシドンは褒美として歳餅を与え、子供を四つん這いにさせ、その背に餅を乗せ、親のもとへと運ばせる。それを見届けた後、来年の訪問時まで行儀良くしていることを子供に約束させ、トシドンは去ってゆく。一通りの行事に要する時間は15分ほどである。トシドンが帰って行った後、甑島の人々は無事に新年を迎えることができるとされる。
トシドンの面は色を塗った段ボール製のもので、衣装は地元産のシュロやソテツの葉で飾られたものである。製作現場は非公開であり、写真やビデオでの撮影も禁止されている。行事の後、12月31日から1月1日までの間にこれらの衣装はすべて焼却される。
歳餅は「トシドン餅」とも呼ばれる。かつて米は貴重品であり、生命の源とも考えられていたことから、トシドン餅は子供の生命の源泉であり、子供の魂をさらに健康に成長させるものとされている。
島の子供たちが避けて通ることのできない通過儀礼であり、子供1人が適齢になるまで、5年間は毎年訪れる習わしである。子供のしつけと成長を願い行事であり、幼い子供をしっかりとした少年や少女へと成長するねがいを込めた人格転換の儀式ともされている。

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prefecture_er: 
city: 
薩摩川内市
datetxt: 
12月31日